小さい頃買ってもらったおもちゃを捨てた
両手で数えられる歳のうちはずっと母にベッタリだった。
7歳くらいまで乳離れすらできていなかったと思う。
幼稚園も行ったり行かなかったりだった。
今思うと発育上多分に問題があったのだろう。
いつだったか、おままごとセットを買ってもらった。
買ってくれとせびったかどうかはあまり覚えていない。
10歳までは色々なものをねだっていたものだから、そのあたりは曖昧だ。
母親の家事に付きまとっていて興味が湧いたのか、幼稚園の遊具のせいだったか、
はたまた親が情操教育のために買い与えたものであったか、経緯も定かではない。
ただ当時、幼児の純粋な好奇心とそれに応える親の愛情があったことは確かだろう。
おそらく何度かは遊んだのであろう。
母親と遊んでいたのか、一人で遊んでいたのかもあまり覚えていない。
幼稚園の頃は一人で遊んでいることが多かった気がする。
5歳くらいまではぬいぐるみや知育玩具に囲まれていた。
児童向けの図鑑なんかも、その辺に転がっていた。
当時両親は何を思って息子にそれらを買い与えたのだろう。
まだ子どもを持ったことがない私には想像することも難しい。
「元気に育ってほしい」みたいな願いでもあったのだろうか。
おままごとセットはたいして遊びもせず、見向きもしなくなっていた。
子ども部屋の整理をしているときに埃を被った"それ"が目に止まった。
20年ばかり、たいしてモノを捨てず、片付けずといった有様なら、必然的にゴミ屋敷同然になってしまう。
そんな始末だったので、いっそ古いものは捨ててしまおうと思った。
それらを45リットルのポリ袋に入れた刹那、記憶のなかに生きる当時の情念のようなものが、およそ熱量を持って脳内を駆け巡った。
この情念はどこへ捨てれば良いのか。
どのように供養すれば良いものか。
記憶と残された親との時間に思いを馳せながら